第1章 愛を歌おう
翔 「ひかり。」
ひかり 「・・・・・ん?」
彼に名前を呼ばれて、応える。
彼の手が私の腕を掴んで、そのまま彼の腰に回すように巻きつける。
細いけどがっちりした腰回りに腕を回すと、翔の背中にピタッと貼りつく感じになる。
絶対的な安心感。
温かい大きな背中。
ひかり 「??」
腰に回した腕は一度解かれ、更にグイッと引っ張られ、翔のパーカーのカンガルーポケットに突っ込まれる。
翔の手も一緒に。
そして、ポケットの中で手を繋ぐ。
翔の大きな手が、温かく優しく、でもしっかりと合わさる。
翔 「・・・・・・・・・・ごめんな。」
小さな、本当に小さな声で呟くのが、背中を伝って耳に届く。
背中に頭をこすり付けながら、ううん、って首を振る。
タバコの匂いと一緒に、背中の、彼の温かさを吸い込む。
お互いの立場が、簡単に未来を夢見られるようなモノじゃなくて。
それこそ、果ての無い海にポツンと浮かんでる小舟みたいに頼りなくて。
だけど、それでも、一緒に前に進みたいと思ってる。