第5章 触れる温かい輪
「ともみ、そろそろ行こ!」
「はーい!」
迎えに来てくれた麻乃と専用のTシャツに着替え、いつも以上に人の多い校門に向かう。交代の時間です、と私と麻乃は隣同士で配置についた。
「案外来るねぇ」
「うん、去年より多い気がする」
そんな会話をしながら2人して取り組んでいるのは、今年も担当することになった受付の仕事。高校3年間、私の所属している部活動が担当している。
実は今日、私の通う高校の文化祭。
そしてお昼からは私達の部活動の発表会。引退しているにも関わらず部活があったのはこの為。
「あー、立ちっぱなしで脚疲れたー・・・」
「ねー。ていうか、この時間どうする?」
「うーん・・・どうしよっか・・・」
あれから1時間後、30分早く役割を終わらせて貰えて、変に出来てしまった発表会までの時間を部室で過ごしていた。うだうだ話していると手元の私の携帯が震え、
(・・・え!?)
画面には何と“功平”の文字。慌てて部室から抜けて電話に出ると、息を切らす私を笑う声が聞こえた。
《息切れてるけど、どうしたの(笑)》
「どうしたのって・・・そっちこそ、」
《今、どこいんの?》
「え・・・・・・何で?」
《だって、どこにも見当たらないし》
「どこにも、って・・・え!?」
《担当って言ってた受付にも、クラスって言ってた屋台にもいなかったんだけど?》
その言葉を聞くと共に、私は急いで走り出した。部活用のジャージを着ている私は少なからず注目されるも、今はそれどころではない。人混みを掻き分け、走って走って走った。
そして
「・・・っはぁ・・・何で、いるの・・・」
クラスの屋台の前で見つけた彼、否・・・彼ら。息切れする私に気付いた小さな男の子が私の脚にしがみつき、それを満更でもなく見届けたその男の子の兄が私を睨む。
「探した」
「・・・ご、めん・・・・・・って、そうじゃなくて、」
「コレ」
睨む兄に続いてすぐ下の弟である彼が見せたのは、この高校からの文化祭の招待状。まさかこんな物があるだなんて・・・知らなかった。だからって・・・
「・・・全員集合、だね」
笹倉5兄弟、勢揃いで来るなんて・・・。私のクラスの人達も、誰だ誰だとこちらを伺っている。