第3章 一度による大きな進展
送られてきたのは文章ではなく、陽太の寝顔の画像だった。
「違うよ、この間話した子だよ」
実は、陽太のことは妹にだけ話していた。普段から一緒に出掛けたり色々話し合ったりする仲で、周りの人からも仲が良いとよく言われる程。口の堅い妹には、つい何でも話してしまう。
「あーこの子か。で、この人は?お兄さん?」
表示された名前を指差す妹にそうだと頷くと、だからマフラー巻いて帰ってきたのか。と、返してもらったことに気づいたようだった。
「また会うの?」
「うん」
「ふーん、頑張ってね」
「・・・何を?」
「んー、色々?じゃ、報告待ってるからー」
気になる言葉を残して出ていった妹に何なんだと軽く悪態をついていると、画面にフキダシが増えた。
[今週の土曜か日曜はどう?]
何て返せばいいのか悩んでいた所だったので、質問文が来たことはかなりの救いだった。
[両方大丈夫だよ! 陽太の画像ありがとう、寝顔も可愛いね]
[じゃあ、日曜の12時に駅集合。 ついさっき寝たばっか]
[あれ、公園じゃなくて? そうなんだ、もう22時だもんね]
[うん、駅。今回はおにぎり作らなくていいから。 お前も早く寝ろよ]
[了解です! はーい、ありがとう。おやすみ]
[おやすみ]
・・・・・・・・・お、終わったあああ。
絵文字も顔文字もないシンプルな文章だけど、普段の話し方や表情を知ってるから怒ってたりする訳ではないということは分かる。早く寝ろ、というのは気遣いなのだろうと解釈したのは、多分きっと間違いではないはず。まだ会って3回目。それだけでも結構彼のことを当初の頃より理解できるようになって来ていると思う。
ちなみに彼のアイコンは・・・空。
「・・・そろそろ寝ようかな」
今日はいつも以上に色々あって過度に緊張したからか、夜更かし常連の私にも睡魔が襲ってきた。送られてきた陽太の画面は、すぐさま待ち受けに設定した。いい夢が見れますよーに、そんな気持ちを抱いて私はいつもより早い寝床についた。