第4章 対面そしてご挨拶
「それじゃあ話してもらおうかな」
「・・・・・・」
「昨日のマフラー事件について」
何ともネーミングセンスのない麻乃に迫られている昼休みの教室。私の机の前に立ちはだかる麻乃に、完全に逃げ場を失ってしまった。
「事件って・・・」
「立派な事件だよ!ともみのこんな貴重な話、聞かない訳にいかないでしょ!」
確かに私は恋バナに参加はするものの、彼氏いない歴が年齢と等しい。人の話を聞き、理想を語るのみだった私の今回のことは、麻乃にとって事件らしい。
「日曜日、頑張れ!」
「・・・それ妹にも言われたんだけど、何を?」
「衣奈(えな)ちゃんにも言われたの?本当、どっちがお姉ちゃんなんだか」
「うるさいな、余計なお世話!」
案外妹の方がしっかりしてるもんだよね、と言う麻乃も兄を持つ妹の立場。本当言いたい放題言ってくれるものだ。
「寒〜・・・」
日曜日当日、電車から降りた一言目がそれだった。暖かい空間というのは一駅分でもかなり身体に染みるもので、外の風は寒さを増したように感じられた。
改札を出ると既に彼らは居て、私は小走りで駆け寄った。
「ごめんね、お待たせ!」
「いや、俺達もさっき来たとこ」
「そっか、なら良かった。陽太寒くない?」
「うん!」
「じゃ、行くか」
満面の笑みで私の手を握る陽太を確認した彼は、陽太の反対側の手を掴み歩き始めた。でもそれは予告通り、公園への道のりではない。
「・・・どこ行くの?」
「んー、ゆっくり出来る所」
あれからSNSでちょこちょこ連絡を取るようになってからお互い慣れ始めてきていて、私の人見知りもおさまりつつあり、彼に至っては最初の頃とは言葉遣いや態度が打って変わったよう。だからと言ってぞんざいになった訳ではなく、根本的な部分は変わっていないのが分かる為、私もかえって親しみやすくなった。
駅からそう遠くないカフェ。ただ時間帯が時間帯なことと日曜日である為、店内はかなり混んでいて暫く待たなければならない。
「・・・・・・」
「凄い人、だねぇ・・・」
まさかの店の外にまで作られた列。さすがにこの寒空の下、陽太を連れては並べない。
ごめん、と謝る彼は、普段は人が少ないので想定外だったみたい。