第3章 一度による大きな進展
「何て呼べばいい?ともみ?とも?」
「ど、どっちでも・・・」
好きな方で、と言うと、意外にも真剣に考え始めたようで。たかが呼び方なのになー・・・とは思ったものの、自分も同じ立場に置かれていることに気づき、私も慌てて考え始めた。
「じゃあ、陽太と同じにするかな。いい?」
「あ・・・うん」
実は、この呼び方は家族や親戚などの身内、そして陽太にしか呼ばれたことがない。そんな呼び名で呼ばれることになるなんて、何だか妙な気持ち。
「で、俺のことは?」
「・・・う〜ん・・・・・・こ、こうへい、くん?」
「んー・・・ま、いっか」
仕方なく納得したというような返事に、お気に召さなかったのだろうかと不安になったけど、私はそれ以外にどう呼んだらいいのか考えつかなかった。いきなり呼び捨てで呼べる程、私の人見知りは甘くない。
「じゃあ、連絡するから」
駅に着いて私にそう言うと、彼は頷く私を確認して、来た道を戻って帰って行った。そんな彼の姿が見えなくなるまで見送ってから私も帰った。
夕飯と入浴を済ませた私は、自室のベッドでゴロゴロしながら音楽を聞いていた。片手に握る携帯の画面には、麻乃からの“明日、事情聴取ね”というとんでもない文が表示されている。
「何を話せばいいのよ〜・・・」
そう呟いた瞬間、画面上部に新たな通知が表示された。ボーっと目を向けると、そこには“こうへい”の文字。タイミングがタイミングなだけに私の心臓が跳ねる。
(えぇ!?ど、どうしよう・・・!)
既読を付けてしまうのが何となく怖くてなかなか開けない。ドキドキと尋常じゃない程に高鳴る鼓動に戸惑っていると・・・
バンッ
「姉ちゃん!」
「っわああああ!な、何!?勝手に入って来な・・・・・・って、あああああぁ!?」
突然ドアを開けた妹にビックリした私は、その拍子に開くか迷っていた彼からのトーク欄を押してしまった。叫ぶ私が煩かったようで、妹は用件を済ませると文句を言いながら部屋を出ていった。・・・と思いきや、ドアの前で足を止めて私の携帯を覗き込む。
「うわ〜可愛い〜!」
「ちょ・・・勝手に見ないでよ!」
「いいじゃん。てか、姉ちゃんの友だちの子ども?早くない?」
子ども、という妹の言葉ですぐにピンときた私は、ようやく携帯の画面に目を向ける。