第3章 一度による大きな進展
私が校門に戻ると、彼は校門の端に寄り掛かるようにして立っていた。早かったね?と言う彼に、ある物を手渡す。
「・・・何コレ?」
「許可証」
「え?」
「学校案内、して良いって」
それは校内に外部の人が入る時に必要な許可証。私が向かったのは、顧問の先生がいるであろう体育館。普段から物分かりがよく、彼の弟が来年入学すると話せば保護者扱いで許可証を貰うことが出来た。
「え、まじ?」
「・・・まじ」
「いいの?」
「うん」
初めて聞いた、彼のちょっと崩れた言葉。意外ではあったけど、彼の自然なその一言で、緊張していた気持ちが緩んだ。
許可証を首にさげた彼と校内を歩いていると、やはり周囲から沢山の目が向けられる。他校の学生が入ってくることなんて文化祭や式典以外ではないことだから仕方ない。一通りの見学を終えると、校内のロータリーにあるベンチに2人で腰掛けた。
「綺麗な学校だなー」
「そうかな?」
「うん。案内してくれてありがとう。まさか校内に入れるなんて思ってもみなかったよ」
確かにこんな容易く校内に入れるなんて、在校生の私でもビックリ。意外とこんなものなのかな?
「もう18時半か・・・暗いな」
「本当だ、」
時間と共に慣れてきた私は、いつの間にか緊張もほとんどすることなく普通に会話出来るようになっていた。
「そろそろ帰るか。帰りは徒歩?バス?」
「徒歩。この時間はバス出てないから」
「そっか、じゃあ送る。・・・って言っても、帰る方向が同じなんだけどね(笑)」
「じゃあ・・・お願いします(笑)」
「うん(笑)」
送るって言うより一緒に帰る、ってのが正しいか。と言って笑う彼に、つられて私も笑う。
「陽太だけじゃなくて、俺まで面倒かけちゃったなー・・・」
「そんな・・・面倒だなんて思ってないよ。陽太くん、元気にしてる?」
「うん、お陰様で。でも、あれから毎日聞かれるんだよ、次はいつ公園行くんだって」
私に会いたいと思ってくれているという陽太の話を、彼は困ったように笑って話した。その話を聞いて嬉しくて嬉しくて、フッと呟いた。
「私も会いたいなー」
嘘ではない無意識に出た言葉。そんな私に、彼は笑って
「じゃあ、次」
「・・・次?」
「いつ空いてるか、教えて」
思いがけない一言を放った。