第3章 一度による大きな進展
そんな私達の様子を、周りのギャラリー以上に驚いた顔をして見ていた麻乃。麻乃が私の友達であることに気づいた彼は、挨拶するように軽く頭を下げた。これまた礼儀はバッチリ。そんな彼に慌てて頭を下げた麻乃は、私の腕を掴んで衝撃な一言を耳打ちしてきた。
「彼氏!?」
「、は!?違うよ、違う違う!知り合い!」
「マフラーは小さい子に貸したって言ってたけど、あれは彼氏のこと隠そうと・・・」
「だから違うってば!本当に貸したんだよ、小さい子に!」
注目の的である彼を目の前にしてとんでもないことを次から次に口にする麻乃に、ただただ否定するしかない。そんな興味津々の麻乃の圧倒されていると、チャイムが鳴り響いた。
「あ、やばい、部活!」
ハッと我に返った麻乃が慌てて時計を確認すると、部活開始時刻の10分前。その麻乃の一言に彼が反応した。
「あ、ごめん、急いでた?」
「ううん、大丈夫・・・」
私はマフラーを買いに行こうと思っていたので急いでいないことを伝えると彼は納得し、マフラーを持って帰ってしまったことを再度謝ってきた。そういうつもりで言った訳ではないと、私はとにかく首を横に振る。
「じゃあ、私行くわ!ついでにともみが来ないこと言っとくからさ!じゃね!」
「えっ、ちょっと待っ・・・」
口早にそう言うと、麻乃は私を残して階段を駆け上がっていった。気づけばギャラリーの集団はほとんどいなくなっていた。
「・・・何かごめん」
「ぜ、全然!寧ろ返しに来てくれてありがとう・・・」
自分のせいで・・・と顔を歪める彼に、そもそも部活は引退しているので行かなくても大丈夫なことを伝えると、よかったー、と一気に息を吐き出した。そして彼はハニカミながら学校を見渡した。
「マフラー返すついでに、どんな学校か見てみたかったんだよね」
「・・・あ、弟さん?」
「うん。パンフレットでしか見たことなかったからさ、どんなもんかなーって」
そう言って見える範囲に目を向けるが、木が多いこの学校は外からはあまり中が見えない。私にマフラーを返す為にわざわざ足を運んで来てくれた彼に、お礼とまではいかないけれど・・・
「・・・ちょっと待ってて」
そう言った私は、彼の返事も聞かずに彼をその場に残して、再び校内に足を戻した。