第3章 一度による大きな進展
校門の近くまで来たけれど、その校門の外側にいるであろう人は、長身である私達にも見えない。それでも背伸びをしてどうにかして見ようと頑張る麻乃。
「んー・・・見えない」
校門では通りすがりに見て行く人、少し遠巻きに見ている人、話しかけようか迷っている人など様々な光景が広がっていた。カッコいいと歓声をあげる人、相反して何だコイツ、というような目で見ている人など反応も多種多様。そもそも、来客人自体が珍しい。
「うわー気になるー!」
地団駄を踏む勢いで悔しがる麻乃。・・・確かにここまで来ると、私も気にはなってくる。でも、間近で見るのもなぁ・・・と思っていると、あるものが目に入った。
「ねぇ麻乃、階段に上れば見えるんじゃない?」
どうせ上らなくてはならない、部室へ続く階段。その建物は女子専用の部室しかないので上る人も限られていて、現に階段にも数名しかいない。
「ともみ、ナイスアイディア!」
提案した私に親指を立てて顔を輝かせた麻乃は、早く早くと私を急かす。そんな一層張り切る麻乃を先頭に2人で階段を目指し、校門を過ぎようとした・・・その時
「あ、ちょっと待って、」
声が聞こえるのが早いか否か。何となく、通りすがりに、チラッと目を向けた先に
「・・・・・・・・・・・・へ?」
「どうも」
思いもよらない人が、立っていた。
(え?え・・・?な、なに?)
頭の中がパニック状態の私は、思わず立ち止まって動けなくなっていた。隣の麻乃がどうしたのかと私に問いかけるのと同じタイミングで、先程まで注目を集めていた彼が私の前まで来て、私にあるものを差し出した。
「え、これ・・・」
そう声を漏らしたのは、私ではなく麻乃。差し出されたものをおずおずと受けとって彼を見ると、彼は少し気まずそうに笑った。
「家に帰ってから気づいたんだけど、連絡先知らないから・・・。返すの遅くなってごめん。コレ、ありがとう」
「あ・・・い、いえ、」
「風邪、引いてない?」
「え、えっと、大丈夫・・・です」
「そ?なら良かった」
相変わらず配慮も徹底している。ただ、私の態度がおかしかったのか、彼は私の知っている顔で笑って私を見下ろしていた。