第2章 Click? Clack!
「種明かしをすると、これが僕の《目を欺く》力なんだよ」
車を停めながら、鹿野さんは私に能力を教えてくれた。
目を欺く。
周りの人の自分に対する認識を変えさせ、全く別の姿に見せる力。それこそさっきみたいに、前を向いているのに横を向いているように見せるのも可能。
……恐ろしい力だ。
「その能力のこともあって、僕は嘘が得意なんだよね」
車から降りて、目の前に佇む建物を見る。
こじんまりとしてはいるが、間違いなくそれは一軒家だった。
赤煉瓦の壁の、小さな家。
「どう?悪くないんじゃない、この家?」
鹿野さんが笑う。
「狭そう」
私がそうつぶやくと、鹿野さんはさらに大笑いした。
「あっはははは!なにそれサイコー」
でも、本当は前いた狭い部屋よりずっと広いだろうし、生活も前よりましだろう。
「……まあ、悪くはないかも」
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家に入ると、私の部屋だというところへ案内された。ファンシーでポップな雰囲気の部屋で、しかし色はパステル。眠るときも安心な素晴らしい部屋だ。
「これからのことを話そうと思うからさ。荷物を一通り置いてきたらリビングにおいで」
「はあい」
私はリュックの中身を机の上に出して、ボストンバッグの中身をベッドの上に投げて、鹿野さんの話を聞きに行くことにした。