第2章 影に隠れし人
口を押さえられているため
黙ってチラリと上を向くと目が合い
?「少し黙ってておくれやす」
短髪の人は小声でそう言って微笑んだ。
「………」
そして足音が聞こえ
さっきまで追われていた事を思い出す
心臓の音がドクンドクンと鳴り
今にも破裂してしまいそうになる。
?「くそっ…逃がしたか…」
“ひじかた”さんは違う方向へと
走って行った。
“ひじかた”さんが走って行った方向を
黙って見つめる短髪の人は
さっきの微笑んだ顔とは違い真剣な顔だった。
?「もう大丈夫どすな…」
そう言ってさっき微笑んだように笑い
私の手首と押さえられていた口を離した。
日向に出て太陽の光に当たる
短髪の人の顔がようやくきちんと見え
綺麗な顔立ちの男性だった。