第3章 俺の正義は脆くて果敢ない
殴り飛ばしされた左頬がじくじく痛む。しかしそんな事よりも人の波にのり、自分の手を引きずんずん進んでいくクエストがとても心配だった。
「クエスト、怪我はない?もしかして…怒ってるの?」
「怪我はないし、…僕がお前に怒る必要がどこにある。ほら座れ」
周りを見回すといつの間にか第一ホールについており、ランクはクエストの言うとおりに隣に座る。それでも心配なのかちらちらと見る彼女にクエストは眉をさげた。
「大丈夫だ。ちゃんとここに居るだろう。」
「そ…そっか。そうだね。」
やっと彼女が安心した、とほっとした。それもつかの間、ホールに教官の声が響いた。とたんに静かになり、全員の目がそちらに向く。教官は息を吸い込みそれらに向けて告げる。
「落ち着いて聞いて欲しい。先程AB棟の渡り廊下間で生徒の死体が発見された。これから安全のため一切の施設への出入りを禁止し、君たちは常に三人一組、または四人一組で行動してもらいたい。」
先生の言葉に一斉にざわざわと驚きの声や、推測の言葉が飛び交う。
「事故か…?でもそうしたら団体行動の意味は…」
「自殺?」
「いやそれはないだろう」
「無い話じゃないよ…」
「…まさかこのFBIアカデミーで…殺人事件?!」
「そういえば人殺しって…、」
「人殺し…?」
「さっきロビーで喧嘩してた奴がいてさ…Mr.クイーン達に『お前らが殺した』って言ってたんだ」
「え、それって…やっぱりこれ殺人事件なのか…?」
それを聞いてランクはグッと唇を噛み、悔しそうにそちらの方を睨む。
「Mr.クイーンか…さんざん人をからかって遊んでいるアイツとクイーンの言いなりのエキストラジョーカーなら…この一件にも絡んでいる可能性はあると思うぜ」
「まじかよ…そんな奴と俺ら訓練してたのか…」
「お、お前ら、ちょっと待てよ!」
そんな中、止めの声が入ったことに驚きそちらを見てみるとひふみがひそひそと話していた訓練生に怒っている所だった。
「そんな簡単に仲間を犯人扱いしていいのかよ!あいつらは確かに嫌な奴らかもしれないけど…ッ」
「そこの訓練生。私語を慎みなさい。あやしい行動は例え犯人でなくとも疑いの目で見られます。」
更に緊張感が高まり、静かになった教室には同じように切迫した様子の教官の声が響いた。