第2章 いじめられっこと覚悟
ひふみは怒りに任せ、早足で廊下を歩いていた。
「(何やあの態度、もうあいつに俺と仲良くなる気ぃなんかないやないか…。ランクちゃんもずっとクエストの方にいて!こっちが下手に出た思たら変態や特殊性癖持ちや言い腐って…)自分のが…自分のがッ…変態やないかい!!!」
ひふみはやり切れなさを右手のツッコミに乗せた。しかしこれがまずかった。目の前に少佐であるジェイが歩いていたのだ。右手が見事にクリーンヒットし、彼女の右頬はそれを直に受け止めてしまった。元気だな、そう声をかけられたひふみは動揺が隠せなかった。
「すいません!柱に向かってやったつもりで……い、いや!言い訳はしません!どうぞ!存分にお殴りください!お踏みください!その代わり退学だけはご勘弁ください!」
「…必死か。私が悪いみたいに見えてならんぞ。安心しろ。私にそこまでの権力はない。私はただの雇われ教官だからな。それに日本人は溜め込みやすいって言うしな。時には外に放出した方がいいんだろう。今日のところは君の土下座に免じて上に報告しないでおくよ。」
そういってジェイ少佐は土下座するひふみを踏みつける。ひふみは踏みはするんかい…と心の中でツッコミを入れながら言葉に耳をかたむけていた。
彼女は踏むのをやめまあ…と手を顎に当て、次の言葉を続ける。
「個人的に君はFBIには向いてないと思うけどね。だいたい交渉相手にすぐに下手にでていいのかい?他の訓練生と違って感情が顔に出やすいし、君、傷つきやすいし。''日本人”らしい……そういわれるとむっとしてしまうのも気が付いているか…?」
その言葉がひふみにぐさぐさと刺さる。顔に出やすいのも、傷つきやすいのも全て図星なのだ。その様子を見ながらジェイ少佐は少し考えるような素ぶりをした。
「……君がどうしてFBIに拘るのかわからないが…君の勉強量は私も知っている。正義感が強いのも、ボロクソに言われても負けない姿も見て来ている。君には理想の捜査官像があるんだろうな。」
そう言って笑いかけられたひふみの頭の中にはあの憧れの女性FBIの姿があった。彼女に追いつきたい、自分はその為にここに入って来たのだ。そう自信を持って言える。
「あります!」
「うん、やはり君の顔は素直でいいな。」