第8章 共謀犯の嗅覚
「女装が趣味だとしても、死体か犯人が女装しているかもしれないのにまだ女装を続けるのか?」
「女装自体は似合ってるからいいヨ。クエストは事件には関係ないネ!!」
「…そこに根拠はあるか?ランクちゃんだってなんでクエストにずっとひっついてるんだ?被害にあうかもしれないのに。」
「それはクエストのことが…、…ひ、ひふみはクエスト達を疑っているカ?!ひどいネ!!」
「いや、疑ってるんじゃないんだ。ただ、犯人だけじゃなくチームにこそ100倍の理解力を発揮するべきだと思って…」
クエストに似て来た、そう思ったテンだが納得はいっていなかった。ひふみは少し考え、ソファーから立ち上がる。
「…よし、テン。クエスト達を迎えに行こう。さすがに遅すぎる。それで…もしかしたら本当にただの性癖かもしれないけど、なぜ女装しているのかは聞いておきたい。それがきっとあいつを信じる根拠にもなる…。」
「《Mr.クイーン》…。女王様ってあだ名があるくらいだもんな。手下があいつ以外にもいくらでもいるんだろ。取り調べの時もずいぶんテン・シーはお前を庇っていたそうだが、どういう関係かな?情報じゃテン・シーの近接格闘はトップレベルだと聞いている。ランク・ジョンソンの可能性も捨てきれないが…テン・シーの衝動的な攻撃性による殺人か、もしくはその忠実さと盲目さを利用したお前の計画的な殺人か…?」
クエストはすぐ寮に帰ればよかったと後悔した。テンの忠実さは少し異常だと前から思っていた。ランクも同じなのだが、理由が分かる。しかしテンは全くわからなかった。だからこそそばに置いて観察しようとおもったのだが…。客観的にみるとクエストとテンは共犯。ランクはあまり力を表に出さないが、あれだけ大々的に力の強さをだしているテンに執着されていれば誰だってそう言うはずである。しかしそれを覆せる確実な一手がクエストにはなかった。