第2章 白雪姫
「───くん、燈斗くん!」
あれからどれほど経ったのか。
俺を呼ぶ八尋の声が聞こえ、ゆっくり目を開ける。
案の定目の前には八尋と、少し後ろに多紀がいた。
「よくそんなに寝れるな」
呆れたような目でこちらを見てくる多紀。
「もう昼休みだよ。何か買いにいこう?」
昼休み…………
ということはあれから一時間ほど寝ていたことになる。
確かに腹も減っていたため、八尋の言葉に頷き立ち上がる。
毎日ここで眠っているせいか、腰の痛みは気にならなくなっていた。
慣れというのはほんとにすごい。
「そーいえばさ」
階段をおりようとしたところで、先導していた八尋がくるりと振り返った。
「今日あの子見たよ」
「あの子?」
「白雪姫」
………………なんだそれ。
おそらく顔に出ていたのだろう、八尋は苦笑して「知らないの?」と言ってくる。
「まぁ、燈斗は毎日ここでサボってるんだ。
そういう情報に疎くてもしょうがないだろ」
ということは多紀は知っているのか。
どうやら話についていけてないのは俺だけらしい。
「椎名真琴と夜神冬香って子、知ってる?」
椎名 真琴(シイナ・マコト)と夜神 冬香(ヤガミ・トウカ)…………?
「誰だそれ」
「校内ではかなり有名だよ。今年の一年生には美少女が二人いるって」
八尋の話によると、その椎名と夜神って奴はこの学校のアイドル的存在なんだそうだ。
入学式からあまり日が経っていないにも関わらず何人もの人に告白されており、同級生だけでなく先輩からも人気なんだとか。