第1章 1
「沖田さんのお陰で、私今、とても幸せです」
「あのさ、大袈裟過ぎない?
…でも、まあ、僕のお陰なのは悪い気はしないよ、ほら、桜ばっかり見てないでこっち向いて」
今度は両手で相手の顔を包み込み、
引っ張れば間抜けな顔をして簡単に僕だけを見る。
「そうそう、その顔、可愛くないなあ」
涙で未だ揺れる瞳には、一枚も桜は無い。
あるのは憎まれ口を叩きながらも
泣きそうな顔をした……僕だけだ。
「沖田さん…?」
「腹立たしい奴」
想像していたよりも、ずっと可愛いと思わせるなんて
会っていない間も僕が考えるより
ずっと可愛いことをしていたらと想像するだけで腸が煮えくり返りそうだ。
ああ、憎い、酷く苛立つ。
けれどそれ以上に愛おしい。
なんと恋とは罪深いものなのか。