第12章 開始
黒子「穂波さん、そろそろウチも休憩です。あまり長くお邪魔しては秀徳の皆さんにもご迷惑がかかります。そろそろ戻りましょう」
穂波「あ、テツヤ君わざわざ迎えに来てくれたの?ありがとう。それでは皆さん休憩中にお邪魔してすみませんでした。タッパは後で回収に伺います」
大坪「おう、ありがとうな」
高尾「じゃーねー、穂波ちゃん」
緑間「……」
胸の奥がザワザワします。
僕は手をつなごうと差し伸べられた手をスルーして、彼女の腰に手を回し自分の方へ引き寄せました。バランスを崩した彼女を抱きとめる。
周りからは抱き合っているように見えたでしょう。場の空気が凍るのがわかりました。
彼女は一瞬何が起こっているのかわからないという表情をしましたが、すぐに僕に笑いかけてきました。まるで泣いている子供をなだめる母親のような顔で。
穂波「ごめんね、テツヤ君。ありがとう」
僕の頭を優しく撫でてから身体を離すと、僕の目を覗きこみながら小さな声で言いました。僕にだけ聞こえるように。
穂波「大丈夫たから、ね?安心して」
日向「何やってんだダアホ‼︎このリア充が‼︎」
リコ「ちょっと黒子君⁈練習中はイチャコラ禁止って言ったでしょう‼︎」
カントクと主将に叱られましたが、彼女は「転びかけた自分を助けてくれただけだ」と僕を庇ってくれました。すみません、君の優しさに甘えてばかりですね、僕は。
不安と後悔と自己嫌悪に押しつぶされそうになりながら、練習を終えました。