第12章 開始
黒子side
穂波さんがレモンの入ったタッパを持って秀徳の練習コートへ行くのが見えました。さすがにあの量は食べきれませんから、秀徳の皆さんに手伝ってもらうつもりでしょうか?
あ、最初に宮地さんに話しかけてしまったようです。少し言葉使いの荒い人なので怖がっていないといいんですが。高尾君と緑間君も話しかけているようです。珍しいですね、緑間君から女の子に話しかけるなんて。少し嫌な予感がします。
お礼を言いながらタッパを渡す彼女を見る緑間君を見て、予感が確信に変わりました。僕は今、人が恋に落ちる瞬間を見てしまいました。恐らく彼女は笑っていたのでしょう。あの、花が咲いたみたいな優しい笑顔で。そして、かつて僕がそうだったように緑間君もその笑顔に惹かれて恋に落ちた。
でも彼女は僕の恋人です。誰にも渡しません。僕の一番大切な人ですから。
黒子「カントク、穂波さんが秀徳の皆さんに捕まってしまって困っているようですから迎えに行ってきます」
リコ「え?ああそうね、黒子君頼むわね」
僕は秀徳側のコートへ向かって歩き出しました。
大切な人を取り戻すために。