第10章 変革
試合は誠凛の負けで終わった。善戦していたけど、相手の5番の人が段違いにすご過ぎた。バスケの知識は体育の授業レベルの素人の私でもわかるくらいすごい。テツヤ君のミスディレクションも通用しなかった。
こういう時はそっとしておいた方がいいのかもしれない。私はテツヤ君に【先に帰るね】とメールをして会場を後にした。
翌日、彼は落ち込んでいた。なにか考えこんでいる時間が長くなった。火神君とは話さないし目も合わせない。ずっと塞ぎ込んでいる。そんなにショックだったんだね。何て声をかければいいのかわからなくて、ただ側にいることしかできなかった。慰め方もわからないなんてダメな彼女だよね、私。
次の試合も、その次の試合も、誠凛は勝てなかった。テツヤ君の不調。魔法のパスは見る影も無かった。初戦の敗戦が尾を引いているようだった。
どうしたんだろう。私はどうすればいいんだろう。なにもできない自分がもどかしくて仕方ない。そもそも彼が慰めを必要としているのかすらわからない。でも私が口を挟んでいいことだとも思えなかった。私は彼が自分の力で乗り越えるのを待つしかできない。力になれなくてごめんなさい。せめて、側にいさせて。
数日後、彼からメールが来た。
【心配かけてすみませんでした。もう大丈夫です。君がいてくれてよかった】
よかった。乗り越えたんだね。私は何もできなかったのに気にかけてくれてありがとう。