第7章 散華
黒子side
放課後、小坂さんと二人で屋上へ続く階段へとやってきました。こんな雨の日に屋上へ来る人はいません。誰にも聞かれたくない話なのでしょう。
穂波「そういえば屋上っていつの間にまた解放されるようになったの?」
4月始め、僕等の入部テストがきっかけで一時的に閉鎖されていた屋上が再び解放されるようになったのは少し前のことです。
黒子「中間テスト前には解放されていました」
穂波「そうなんだ…先生達も使えるなら使えるって教えてくれればいいのに」
黒子「また誰か朝礼前に決意表明したりしないように伏せてあったのかもしれません」
穂波「日本一になる‼︎って?」
二人で顔を見合わせて笑いました。
やはり切り出しにくい話なんでしょうか。僕の方から聞いてみましょう。
黒子「それで小坂さん、聞いてほしいことってなんですか?」
小坂さんは一度視線を足下に落とすと、少しの間黙りこんでしまいました。でもすぐにもう一度僕の目をみて言いました。
穂波「あのね、笑わずに聞いてほしいの」
深刻そうですね。僕は笑ったりしません。
穂波「私ね…私、黒子君のことが好きなの」
今、なんて?
穂波「桜並木を見に連れてってくれた時からずっと、黒子君のことが好き」
そんなに前から?
穂波「だからもし私でよければ付き合ってくれませんか?」
僕と、ですか?
頭が真っ白になりました。小坂さんが、僕を、好きに?
穂波「今すぐ答えがほしい訳じゃないから一度考えてみて、ね?」
真っ白な頭のまま、自分から出てきた言葉に僕は驚きました。
黒子「君の気持ちはとても嬉しいです。でも、すみません。僕はその気持ちに応えることはできません」
何を言ってるんだ、僕は。
黒子「僕はバスケ部の仲間に必ずチームを日本一にすると約束しました」
やめろ、それ以上言うな。
黒子「僕にとってバスケは一番大切なものです」
彼女を傷つけるな。
黒子「僕は君を一番大切に思えない。だから君の気持ちには応えられません」
違う、僕は、君を
僕は彼女を傷つけた。