第25章 準々決勝開始
青峰「……何やってんだかあのバカは」
桃井「え?」
青山君がふと呟いた。その目で火神君を追いながら。コートでは火神君とヒエノさんが再び対峙していた。ヒモトさんがあのシュートを撃つ。火神君の反応が少し遅れた。ううん、ワザと遅らせたのかもしれない。何故かはわからないけれど、火神君はタイミングを見計らっているように見えた。もしかしたらあのシュートの攻略法を見つけたのかもしれない。でもボールは綺麗にゴールへと吸い込まれた。そこから陽泉の猛攻が始まり、あっという間に49対58まで差が開いてしまった。残り6分51秒。どうすればいいの⁉︎
青峰「……ったくバカヤローが。このままじゃ負けだな」
桃井「え?」
穂波「はい?」
青峰「アイツの考えてることなんざ手にとるようにわかるぜ。大方どうせ『ゾーンに入れれば…』とか考えてんだろ」
アイツって火神君のことだよね?さっきからずっと目で追ってるし。ゾーンって……1回戦で青原君と火神君が入ったっていうアレ……?
青峰「……が、このままじゃ一生かかってもゾーンに入ることなんかできやしねぇよ」
桃井「……え?」
穂波「どういう…ことですか?」
青峰「ゾーンてのは1回目より2回目の方がはるかに入ることが難しくなる」
穂波「……どうしてですか?」
青峰「なぜなら一度体感して知っちまったからだ。あのなんでも思い通りになるような状態を知ってしまえば自然『もう一度…』という気持ちが湧く」
うん、まあそうだよね。普通はそう思うよね、人間だもん。
青峰「けどその気持ちこそ雑念。集中状態であるゾーンに入るために一番あっちゃなんねーもんだ。ゾーンに入るためにはゾーンに入ろうとしたらだめなのさ」
よくわからないけれどそういうものだとしたら、今の火神君の状態ではゾーンに入れない。このままじゃダメなんだ。でもどうしたらいいの⁉︎火神君にそのことを伝える術はない。仮に伝えられたとしても必ずゾーンに入れるとは限らない。どうすればいいの⁉︎