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【ハイキュー!!】青息吐息の恋時雨【短編集】

第29章 隣の客は毛色が違う(天童覚)





この状況に至るまでの経緯を説明しよう。

白鳥沢学園には、一つだけ和室の教室がある。古くは書道や華道など、いわゆる教養として礼儀作法を学ぶための場所だったそうだ。

けれどカリキュラムがガッチリ固定された平成の現代、受験戦争に勝利するべく、畳張りのこの部屋で授業が執り行われることはなくなった。

時代の変化に伴ってその役割を変えるのは大事なことだ。今や、この教室は"説教部屋"と称され、やんちゃな生徒が罰として長時間正座させられる空間へと変貌を遂げていた。


そう、僕と天童はいまお仕置きを受けている。

けど僕たちは不良じゃない。別に乱闘騒ぎを起こしたとか、そういう、誰かに危害を加えたわけじゃない。

ただ教室にカセットコンロを持ち込んだだけだ。

机の上で鍋パーティーしただけだ。


元を辿ると言い出しっぺは天童だった。実行主犯は確かに僕だ。思い立ったら口に出して即実行というフットワークの軽さが男子高校生の長所なのだから。


クラスメイトが食堂にどっとくりだした後の人の少ない教室で、僕は悪友たちに机を支えられ、火災報知器をラップで覆った。そうすると、鍋から立ち上る煙に反応しなくなるからだ。そしてその下にカセットコンロと土鍋を設置し、皆でひとときを楽しんだ。


そこまでは良かった。


満腹による幸福感と達成感で、僕らは火災報知器に被せたラップを回収するのを、すっかり忘れてしまったのだ。


更に運が悪かったのは、昼休み明けの授業が教室での保健だったことだ。うちの体育教師は怒ると物凄く怖い。


「誰だ」

と、先生はドスのきいた声で天井を真っ直ぐ指差した。

やばい、と思い、僕は「すみません、僕です」と名乗り出た。ほぼ同時に、天童も席から立ち上がっていた。

他の奴らは素知らぬ顔をしていた。
(今週いっぱいは毎日食堂で飯をおごってもらおう)


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