第9章 就任
「おはよお、主人公の名前」
「…刺すわよ」
朝起きて開口一番、物騒なことを言ったのは、勿論私の布団の横で添い寝をしている市丸ギンのせいである。
「ギン…まさか女子寮にまで来るとは思ってなかった」
「朝早く起きてもーて暇やってん」
「暇やってん。じゃないわよ…てか着替えるからどけ」
的確にギンの額をデコピンで叩き、部屋から追い出した。
…あの野郎。
勝手に部屋入るなんて…うん殴ろう。
朱の袴に身を包み、部屋から出た。
目の前には壁にもたれかかって不貞腐れているギンがいた。
「デコピンて…せめてビンタ欲しかったなぁ」
「Mなの?」
「ちゃうわ」
眉間にシワを寄せながらも高らかに笑い出す。
そんなギンの姿に、私もつられて笑う。
思えば、
もしかしたらこの時期が私の一番輝いていた時間だったかもしれない。
自分を偽らずに過ごせた…私らしかった時間。