第8章 ギンへの信頼【過去編】
「主人公の名前がええねん」
飄々とした雰囲気は消えて、こはずかしそうな、初めて見る市丸ギンの心からの笑顔がそこにはあった。
「…勝手にすれば」
「おおきに、主人公の名前」
スタスタと先を歩く主人公の名前の背中を市丸は追いかけ、追いついた主人公の名前の背中を優しく叩く。
市丸にとってはなんて事のない、ただのボディタッチであったが、普段他人に触られる事などなかった主人公の名前には、大きな事に思えた。
…暖かい。
触られた肩からジワリと伝わる熱が...
感覚が心臓まで届き、お天道様に当たっているかのような、そんな暖かさに主人公の名前は包まれた。