第8章 ギンへの信頼【過去編】
「ねぇ藍染さん」
「...?」
話しかけてきたのは、クラスは同じだが今まで話したこともなかった女子生徒だった。
私より10歳以上だろうか...。
確か結構な上級貴族の末っ子で、その甘い顔に釣られ、いつも後ろには男を従えていた。
当然の如く、主人公の名前はそんな事に興味も向けないでいた。
一体何のようだ。
怪訝そうに顔をしかめたのにも関わらず、女子生徒は構わず話しかけてくる。
「今度、課外演習あるじゃない?」
「...」
「あれ、私と組まない?」
「...はぁ?」
思わず漏れた声に、女子生徒の眉がピクリと動く。
怒りを感じているのか、作った拳が小刻みに震えていた。
しかしそれでも、ねぇいいでしょ?
と顔を近づけてくる。ふわりと香る香水のキツイ匂いに、咳き込んだ。
「いいよね!じゃあよろしく!」
許可も承諾も何もしていないのに、勝手に話を決めつけられ、女子生徒は呆気にとられた主人公の名前に否定もさせずに去っていった。