第7章 市丸ギンと私
「ギン」
この名を呼ぶのは、もう何度目だろうか。
その度に見る、コイツの顔も。
「あ、久しぶりやなぁ主人公の名前!」
「...久しぶり」
霊術院の中にある男子寮の廊下を歩く、白髪の少年は声をかけた主人公の名前にタタタッと駆け寄った。
「どうしたん?学期始めは明後日から...」
「屋敷にいても暇だったの」
眉間にシワを寄せるギンに、笑みを浮かべながらぶっきらぼうにそれだけを告げた。
窓から差し込む光が目に当たり眩しくて、日が当たらない壁に寄りかかった。
それにギンもならって向かい側の壁に寄りかかった。
「...ほうか」
「聞かないんだ、理由」
「えぇよ、主人公の名前が言いたくないんやろ?」
ギンの白群色の目が静かに私を捉え、少し寒気がした。
いつからだろう。
私の考えが、ギンに筒抜けなのは。
気味が悪いと思うと同時に、ギンの事は信頼している。
「ありがとう、ギン」
「...せや、剣術の相手してや」
「手加減なしね」
「うぇっ...死なないよーに頑張りますわぁ」
照れ隠しか、いつのも増しておどけるギンの後ろ姿を私は見つめていた。
そうだ...
あの日も、コイツはこんな感じでいたっけ。