第13章 次の朝
「あ、お兄ちゃん。おはよう!」
扉を開けると、僕に気づいたヒナミちゃんが此方へ駆け寄った。
僕はヒナミちゃんの頭をぽんぽんと撫でると、彼女と話していた◯◯ちゃんに目を向ける。
「おはよう金木君。」
よく眠れたか、という言葉を掛けようとして止めた。
何故なら、彼女の顔には疲労の色が見えたからだ。
大切な人を亡くして、よく寝ることが出来るなんてよっぽど相手に無関心でなければ無理に決まっている。
僕は何を言いだそうとしていたんだ。
「あ、えっと、おはよう。珈琲、飲む?」
僕はどういう顔をしていいか分からなくて、紛らわすようにそう言う。すると、彼女は僕の元まで歩いてきて頬に手を伸ばした。
「金木君、寝てないでしょう。ごめんなさい、私の所為で。」
すりっと優しく指の腹で目元を撫でられる。
彼女の瞳は、僕を心配している色に揺れていた。
《でも、君だって眠れてないじゃないか。》
そう思ったけれど、口に出したら困らせてしまいそうで。僕はその言葉を口に出さずに喉の奥で噛み殺した。