第1章 チア女子
放課後、同じクラスのユキと部室に向かう。
廊下を歩いてるとき、ラインの着信音。
わたしはスマホを出して見る。
「1年のマリナ、補習で遅れます。だって。返信しとくね」
私はユキに言って、歩きながらうつむいてメッセを打つ。
しばらくしてユキが私にコソコソ話す。
「なんかさっきすれ違った暗そうな男、ナコのことじっと見てた。
ちゃんと桃越先輩の彼女になれば、あんなのに目をつけられることもないのに…」
暗そうな男?
私はちょっと振り返る。
あの後ろ姿…。
逢坂くんだ。
……。
「わたし教室に水筒忘れてきちゃった。取りに戻るから先に行ってて」
私はユキに「ごめんね」ってジェスチャーをして教室に戻る。フリをする。
嘘ついてごめんね、の「ごめんね」
私は小走りで彼の後ろ姿を追いかける。
やっぱり逢坂くんだ。
「はぁはぁっ…逢坂くん!」
私は後ろから逢坂くんに声をかける。
ちょっと息が切れちゃった。
彼が振り向く。
えっと…。
「ラインやってる? ID交換しない?」
私はバカみたいにスマホを振ってID交換を求めた。