第4章 夢をみた
……
夢を見た。
逢坂くんと二人でデート。
映画を観にきたの。
その後、喫茶店でパンフレットを見ながら感想をおしゃべり。
帰る前に書店に寄って、逢坂くんは今日観た映画の原作本を買ったの。
そして
「ナコちゃん、先に読んでいいよ」
って、その本を貸してくれた。
そんな夢を見た。
これは、私たちが初めてデートに出掛けたときのお話。
理想の彼氏と理想のデート。
幸せだった…すごく…。
……
「ナコちゃん…」
彼の声…。
大好きな彼の声。
「…うん?」
目を開けると、優しい彼の顔が見えた。
私はにっこり笑って目を覚ます。
彼もにっこり微笑む。
……。
でも思い出した、現実を。
この部屋が思い出させた。
「もうすぐ5時だよ。そろそろ帰る準備をしたほうがいいかな?」
彼が私に尋ねる。
「あ…。帰して…くれるの?」
私は思わずつぶやく。
「ん? 帰りたくない? よしよし…。気持ちはわかるけど、お母さん、晩ごはん作って待っているんじゃないかな? 僕の家で食べていく? なら電話を…」
彼が私の手を握り、頬に当ててすりすりする。
「あ…。ううん、ごめん。なんか寝ぼけてた。えへへ…」
私は起き上がり、笑ってごまかす。
監禁とかされるのかと思ってた。
普通に帰れるんだ…。
「ふふ…可愛い。ナコちゃん」
彼が優しく私を抱きしめる。
……。
暖かくて気持ちいい…。
「じゃあ…わたし、服着るね」
「うん。僕はあっち向いてるから」
彼が軽くたたんだ私の服を、枕元に置いてくれる。
そして、向こう側を向いて雑誌を読んでる。
……。
やっぱり優しい…。