第14章 黒い誘惑
「う…ん。ナコが嫌なら、僕はその気持ちを大事にするよ…」
仕方ないなって感じで、彼は目を伏せて頷く。
なんなのその、僕は優しいから譲ってあげたよ感。
それ全然優しくないから!
ていうか、この部屋隠しカメラとかないでしょうね…。
今度調べなきゃ。
「もういいでしょ。もう私、自分で脱ぐ」
私はベッドに起き上がり、さっさと自分でタイツを脱ぐ。
ポイッてベッドの下に落とす。
彼がその丸まったタイツを拾い上げて見つめる。
「あったかい…」
そうつぶやいて、大事そうに頬にすりすりする。
…キレた。
「そんなにタイツが好きならタイツと結婚すればいいでしょ! さよなら!」
私は制服を拾い上げて着る。
上着も着て、カバンを持ち上げる。
「わぁあ、ちょっと! タイツに嫉妬してるの? おかしいでしょ? 冷静になって、ナコ!」
彼があわてて私を止める。
「おかしい? おかしいのは紘夢の頭でしょ!」
「何がおかしいのか全然わからない! お願いだから少し冷静になろう。話そう!」
「変態と口ききたくない!」
私は素足のまま玄関に向かう。
追っかけてくる彼を振り払い、そのまま靴を履いてドアを開ける。
……。
すごく寒い!
「寒っ……。やっぱりタイツ返して…」
「うん…。部屋に戻ろう…」
…