第13章 みつけて(R18)
朝、私はいつも通りの時間に玄関を出る。
靴箱の上の鏡で、髪と制服と笑顔の最終チェック。
「いってきまーす」
…
そういえば、さっきメッセの着信音鳴ってた。
私はポケットからスマホを取り出してチェックする。
紘夢から
『ごめん! 5分ぐらい遅れる』
めずらしい。まあでも5分だけだし。
私はいつもの待ち合わせ場所の公園にいつも通り向かう。
…
待ち合わせの公園。誰もいない。
いつでも紘夢は私より先に来て、私を待ってくれている。
登校のときだけじゃなくて、デートのときも必ず。
だからこんなふうに彼を待つなんて…
ふふ、なんだか新鮮。
朝の空気は少し冷たい。
でも紘夢のことを考えると、私のまわりだけがあたたかくなるような。
いや、むしろ熱い。
このなんとも言えない感覚を、彼なら言葉に、文字に出来るのだろうか。
彼の書く小説のヒロインなら…
私は目を閉じ、胸に手をあてて、様々なことに思いを馳せる。
好きな人を待つ時間って素敵なのね…。
「よう、ナコ」
あ…もう紘夢来た?
ってなんか雰囲気違うな。
……。
声をかけたのは幼なじみでクラスメイトの斗真だった。
「なんだ。斗真か」
「なんだとはなんだよ」
私はガッカリが表に出ていたらしく、斗真が不服そうな顔をする。