第12章 僕のミス藤城
「アヤ先輩があんなにミス藤城にこだわってたなんて」
ユキがため息をつく。
「去年はエントリーしてたけど、季節はずれのインフルエンザで欠席だったんだよね」
「アヤ先輩、女子アナ目指してるらしいよ。だからミスとかハクがつくんじゃない?」
作戦会議に参加する予定だった他の2年が教えてくれる。なるほど。
「こうなったら、チア部のプライドをかけてアヤ先輩を応援するよ!」
ユキがコールすると、部員みんな元気よく応える。
はぁ、わたしは肩の荷が下りた。
……
「はぁ、よかった…」
紘夢もホッとしてため息をつく。
放課後、学校からの帰り道を私たちは並んで歩く。
「ねぇ、もしかして紘夢…。わたしが目立つのが嫌ならチアも嫌…?」
私はちょっと心配になったことを尋ねる。
「ううん。僕はナコのことをずっと見てきて、ナコがチアのことを大事に思って、いつも頑張ってるのはよくわかっているよ。
そんな君のことが僕は大好きなんだ」
そう答えて、彼は優しく微笑む。
うれしい!
私もにっこり笑顔を返す。
「ただ…サッカー部の応援だけはいまだに平常心ではいられないけどね…。そんな僕を君はどう思う…?」
彼が弱気な顔でつぶやく。
私は彼の腕にギュッと抱きつく。
「バカだと思うよ!」
私が笑いながらそう言うと、彼も嬉しそうに笑った。