第11章 目の前のことが知りたいの(R18)
「おはよ!」
「おはよう」
いつもの朝の始まり。
いつもの公園で、紘夢は私の登校を待ってる。
私が「おはよ」って言うと、彼は読んでいる本をカバンにしまいながら「おはよう」って答える。
透明で明るい朝の光。
そんな朝の光を浴びているのに、私が思い出すのは、彼とした…あんなこと。
勝手に思い出して、勝手に赤くなってしまう。
そんな邪念を吹き飛ばすために、私はうつむいて地面を軽く蹴る。
「行こうか」
彼がにっこり微笑む。
いつものように。さわやかに。
紘夢は思い出さないの?
ちょっと痛かったけど…わたし、すごく嬉しかったんだ。
私もいつものように、さわやかに見えるように微笑み返す。
私たちは一緒に並んで学校へ向かう。
…
お昼休み、リカたちとお弁当を食べた後、図書館に向かう。
途中の廊下で、桃越先輩に会った。
「ナコちゃん」
正面から歩いてきた先輩が私に手を振る。
「あっ、こんにちは」
私は立ち止まって、笑顔で会釈する。
「ナコちゃん、彼氏出来たんだって?」
先輩も立ち止まり、笑顔で話しかけてきた。
「えっ、あっ、はい。そうなんです。出来ました」
ちょっと恥ずかしいけど、話早くてちょうどいい。
「2年? どんな子?」
「えっと…2Eで…文芸部の逢坂くんです」
「ふーん、そっか。よく知らない子だけど…大事にしてもらってる?」
「あ…はい。優しいです」
私は急に恥ずかしくなって、うつむく。
「…ていうか、もしかしてあの子? 彼氏」
先輩が後ろを指差す。
購買のパンを持った逢坂くんが、突っ立ってこっちを見てた。
「あっ、逢坂くん…。そうです」
ヤバッ…別にそんなんじゃなくても紘夢に見られるとややこしい…。