第3章 緊張
「沙織様、この一室は私たちも使用しておりませんので、ご自由にお使い下さいまし。」
正午くらいにノボリさん達に連れられて(引きずられて)マンションにあるサブマス宅に来ていた。
「・・・ありがとうございます。お世話になりっぱなしで。」
本当は「こんなに広い部屋借りられません!」なんて言って物置にでも篭りたいくらいだったが、マンションに来る前に私の『遠慮する』という選択肢は見事に破壊されてしまった。
「いえいえ。遠慮なさらずに。」
「・・・ねーノボリー。」
クダリさんが手にチラシを持ってこっちに歩み寄ってきた。
「どうしました?クダリ。」
クダリさんが私をチラッと見ながらノボリさんにチラシを見せる。
「これは・・・。」
「うん。そう、それ!」
・・・今のは会話になっているのだろうか?
双子だから?双子だからなの?
二人の会話に対して質問を投げかけていると、今まで背を向けていた二人が同じタイミングで「バッ!」っと振り向いた。
「・・・な、何で二人ともそんな楽しそうな目でこっち見て来るんですか。それとノボリさん。口元が笑ってません。逆に怖いです。いや、もうどっちも怖いです。なんなんですか?」
その瞬間、クダリさんがさっきとは間逆のエンジェルスマイルでチラシを渡してきた。