第5章 青い月。
「ねぇ、柚子。歌ってよ。あの歌。」
「ん?映画の?」
「そう。」
私は美風さんにリクエストされた
映画の劇中歌を歌う。
「うん。僕、その歌すごく好き。」
そう言って美風藍は笑った。
「僕の中にね。誰か違う人がいるんだ。」
「…?」
「藍音って言ってた。」
「藍音さん?」
「そう。彼は自分の殻に深く閉じこもってて…いつもいつも悲しそうなんだ。」
「でも、この曲を聴くと彼はいつも静かに笑うんだ。」
「…。」
「彼が笑うと不思議と僕も…嬉しくなるんだ。何故だろうね。」
そう言って美風さんは静かに笑った。