第3章 不調。
「君を…帰したくないんだ。」
美風さんはぽつりとそう言った。
「…え?」
「理由はよくわからない。でも、もっと君とこうして歌っていたいと思ってしまう。」
美風さんは困ったような顔をして
自分の胸に手を当てていた。
「メリットはあまりないんだ…。僕だって終わらせる予定だった仕事が終わらない。君だって寝不足になってしまう…非合理的なんだ。」
「…でも…一緒に居たいんだ…。一緒に歌いたい…。何故だろう…?」
そう言って美風さんは寂しそうな顔で
私をじっと見つめた。
なんて答えるのが正解かなんて
わからなかった。
でも、私はただ、
その寂しそうな顔をする美風藍が愛しくて
私は彼に駆け寄ると、
彼を強く強く…
抱きしめた。
「…私も…一緒に居たい。美風さんと…ずっと…。」
「…うん…ありがとう。」
そういうと、美風さんは私を包み込むように
抱き返した。
美風さんの体からは不思議な音がした。
まるで冷蔵庫みたいな…
ゴーっと低い音が鳴っていた。
美風さんはいつも不思議な事ばかり言うし、
もしかして、本当にロボットだったりして…。
きっとそんな事言ったら、
美風さんはいつもみたいにクールに
バカじゃないの?って
言って来るんだろうな…。
ロボットに
感情なんて…ないのだから。