第3章 不調。
しばらく、美風さんに恋愛ゲームの指南をしていると、
美風さんはすっかり恋愛ゲームマスターのようになった。
美風さんは、
「大体のパターンは理解した!」
と嬉しそうにしていた。
美風さんによるロボットの演技指導も
満足のいく出来になってきたようで、
特に何も言われなくなった。
でも、それは
なんとなく一緒に居る理由がなくなったようで
私は少し寂しかった。
「ねぇ、柚子。僕は好きって感情の概念は理解できた気がする。でも、おかしいんだ。」
美風さんは溜息をついた。
「何がですか?」
「僕は今不可解な現象に陥ってるんだ。」
美風さんは私をじっと見つめた。
「…?」
「もう君と一緒に過ごす理由はあまり無いんだ。お互いの目標は達成したし…。でも、それを考えると何故だかすごく胸が痛くなって、そう考える事をやめさせるんだ…。」
美風さんは苦しそうな顔をした。
「メンテナンスに行っても異常はないし…わからないんだ…。ねぇ、君にはわかる?」
私は思わず、
胸がドキドキと速くなった。
美風さんは不思議な言葉を良く使う。
本当に自分に感情がないように、
まるで自分がロボットであるみたいに…。
それが美風さんなりのジョークなのか
よくわからない…。
でも、その時美風さんが言った言葉は
まるで…
"もっと一緒に居たい"と言っているように
受け取れた。