第1章 砂浜に流れ付いた者
「……しかし驚きました、気がついたら砂浜にいましたから」
「……!!」
あ、食いついて来た。さり気なくでもよかったかな、いやこれ果たしてさり気ないのか? 露骨ではないか?
まぁ露骨でもなんでも、竜医さんの対応は変わらないだろうけど。
「その、教えて貰えませんか。あなたが何故、どうやってここに来たのか」
いままで気をつけて控えていた竜医さんの声が、心なしか高ぶっている。そりゃね、長年思う相手の手がかりが降って来たのだから。どれだけ会いたいか、必死なのかは知っている。しかし、いい返事はできない。
「残念ながら、何故私がこの状況に置かれたのか、私にもサッパリわからないのです」
「そう、ですか……」
落胆した様子を見せる竜医さん、私が意図的にタケルに会いに来たのならば、私の世界からはこちらに行く手段があるのではないか、と考えておかしくない。しかしそうではない。
「あなたの大切な人の情報は、残念ながら手に入っていません。黙っていて申し訳ありませんが、こっちで勝手に色々調べさせて貰いました。竜育成支援の受付は見つかりましたが、個人情報は個人情報保護法に基づき問い合わせ出来ず、そもそもサーバーの負担の問題で、古い情報はもう削除されているそうです」
竜医さんは真剣に私の話を聞いている。よくもまぁこんなにスラスラと誤魔化しを述べられたものだ、嘘はついていない、しかし本当に核心的なことは何も触れていない。
竜の風詩2、竜育成シュミレーションゲーム、ブラウザゲーム。仔竜の風詩の前作。