第12章 想い思われ
「手際よくなったよな」
「え、そうかな?」
「おう。初日思い出してみろよ。あの濃いドリンク! あれは笑ったわ」
「や、やめてよ!!」
人間慣れないことをするのは駄目だ、いや本当に。
「……雨降りそうだな」
「そう?」
言われて空を見上げたが、今は雲のない晴れ模様が広がっている。とても今から雨が降る様にも思えないのだけど。
「あれだ、野生の勘」
「自分で言うんだ」
「人に言われるとむかつくから自分で言ったんだよ! 微かに雨の匂いがする」
「うわ、ゴリラ」
「ああ!!? ぶっ飛ばすぞ!?」
「大ちゃん! 女の子に暴力は駄目だよ!?」
「こいつは悪い!」
「やめてよねぇ」
「ってめぇ!!」
三人でじゃれあっていると、見兼ねた征十郎が「遊んでないで練習しろ」と言葉をかける。気だるそうに去る青峰の背中に小さく、心の中で頑張れと呟いた。
「さて、有栖ちゃん。茶々っと雑用終わらせて皆の練習見学しようよ!」
「それもそうだね」
私達は急ピッチで雑務を片付け始めた。夏の暑さが体にくるが、こうやって体を動かすのも悪くないもかもしれない。
丁度練習も一区切りし、皆が休憩に入り始めた頃、黄瀬が私のところへ駆け寄ってきた。なんだろう、昨日の話のことを思い出して一瞬緊張が走る。