第12章 想い思われ
「あ――えっと……今、いいかな? 有栖っち」
「……うん」
心の準備は不十分なまま。彼の後を追うように、私達は皆から離れた森の少し奥へと向かった。
黄瀬の大事な話。なんだろう……変な暴露とかじゃないよね? 実は女でした! とか。ないか……あってもたぶん私は納得してしまうけど。
「この辺でいいかな。わざわざ呼び出すような真似して、ごめんね」
「え!? あ、いや……いいよ。大事な話なんでしょう?」
息が苦しい。緊張で、上手く喋れない気がする。それを知ってか知らずか、黄瀬は今までにないくらい、とても自然で穏やかな笑みを浮かべていた。
――綺麗だ……。
太陽に照らされた彼の髪は、きらきら光って宝石みたいだ。彼の笑顔も、その瞳も全てが輝いて見えてまるで別の人間のようで。ああこれが、モデルってやつなのかな……芸能人のオーラってやつか。
なんて、一人納得していると黄瀬が意を決したように口を開いた。
とても静かなこの場所に、彼の声はとてもよく響いた。
「俺、最初は有栖っちのこと別になんとも思ってなくて……変な子って思った。俺のこと知らないし、モデルなことも知らないし……バスケ部の俺さえ知らなくて。でもそれが新鮮だったんス。俺には、そんな女の子との出会いはなかったから」
気のせいか、彼の頬が少し赤いような気がする。彼も緊張しているんだろうか。