第11章 気まぐれと笑って
「あまり紫原を甘やかさないでおくれ」
「そんなんじゃないよ……懐いてくれてるだけだよ」
「有栖が相手をするから、奴は調子に乗るってことを身をもって先日体感したと思うが?」
「っ……!!」
一気のあの時のことが蘇る。や、やめてよ! 考えないようにしていたのに!! けれどその努力も虚しく、つい昨日の黄瀬とのキスさえも思い出して私の顔はきっとゆでだこだろう。
「そんなに恥ずかしかったのか? ふっ、有栖はお子様だな」
「同い年の征十郎に言われてもね……って怖いな睨まないでよ。ごめんって」
ぎろりと睨まれたので、表面上の謝罪だけしておいた。
「そうだ、有栖。合宿最後の日に君に言わなくてはいけないことがある。とても大事な話だ」
「大事な話?」
「どの時間帯でも構わない、俺の為に有栖の時間を少しくれないか?」
「……別に、いいけど」
「そうか。楽しみにしている」
黄瀬と同じこと言ってる。征十郎の大事な話って何? 全然想像できないんだけど……。
「最終日がこんなにも重いと感じるなんて」
見上げた空は、心なしか曇って見えた。
そんな私に視線を向ける誰かの存在を、知らぬまま。