第11章 気まぐれと笑って
「はぁっ……、何する……のよっ!」
「しっ。静かに……皆起きちゃうっスよ」
「え?」
耳をすませば、規則正しい寝息が微かに聞こえてきた。そうか、静かな理由はこれか。
「俺は好きな子を泣かせたりしないから、これ以上身勝手な行動はしないっス。でも……合宿最後の日、有栖っちに大事な話があるっス。聞いて、くれる……?」
いつになく真剣な彼に、私は強く反論することさえできず、頷いただけだった。すると彼は安心したように「おやすみ」とだけ囁いて、私を抱きしめ眠る。
ああもう離してよ、なんて思うのに意外と腕の力は強くて。振りほどけそうにない。私も馬鹿だな、甘いな……なんて心の中で独り言を呟いては、彼の腕の中で目を閉じた。もし今何かの夢を見るのだとしたら、どんな夢を見るだろうか?
それなら、彼の夢がいいな……彼の、夢……――。
「おい、おい有栖」
「ん……」
「起きろ、有栖」
「……ん?」
誰かに揺すられ、意識が浮上する。あんなに重かったはずの瞼は羽のように軽く、ふわりと視界を映し出した。目の前にいたのは、しかめっ面の征十郎だった。