第11章 気まぐれと笑って
「俺、初めて好きな人が出来たかも」
「急にどうしたの。もう好きな人暴露大会とかはいいよ?」
「そんなんじゃないっスよ。有栖っちは……俺のこと、どう思う?」
どう、とは? と聞いていいのかわからなかった。だから黙ってしまったけれど、彼はそれをどう捉えたのか「なんでもない」といつもと変わらない気持ち悪い笑顔を浮かべた。
「そういうの、やめたら……?」
「そういうのって?」
「無理矢理笑うの。やめたら、いいのに」
「……」
「モデルだから、なのかもしれないけどさ……そんな作り物の笑顔でいるとさ、黄瀬を好きになってくれる子も表面の君しか好きにならないと思うよ」
「……じゃあ、有栖っちは?」
「は?」
強く肩を掴まれて、互いの間に少しの隙間を彼が作ったかと思えば、再びそれを縮めるかのように、私の視界を彼の綺麗な顔が埋め尽くした。
「っ……!!」
「……んっ」
瞬時に理解した。
キス。
「やっ、黄瀬……っ! んっ」
「んんっ、黙って……んっ」
角度を変えて、呼吸を奪われて。頭がぼうっとする……それを見計らったかのように、彼はようやく唇を離した。