第14章 彼と私の終着点
唇から、彼の熱を感じて頬も身体も熱くなる。これは夏の暑さのせい?
酸素を求めて、互いに離れれば、酸素が肺を満たし始める。
「これ以上は、教える必要はないね」
まるでそれだけで十分とでも、言いたげに。彼は言葉にしない、教えると言いながら結局何だったのかと問いかけても「もう教えた」というだけで。
帰り道、征十郎は私に微かに聞こえる大きさで私に告げた。
「有栖がどんな形であっても、今俺の隣にいてくれるなら。それでいい」
何かが足りない。そんな気はした。私は、どんな言葉をどんな答えを、彼に期待していたのだろうか?
でもきっと、これが彼が教えた彼の一部。物足りないのは気のせいではないはず。
つまりは、そういうことなのだろう。