第14章 彼と私の終着点
「有栖、俺は君に謝らなくてはいけないことがある」
「……何?」
「小学生の頃のことだ。俺のせいで、有栖には……嫌な思いばかりさせてしまった」
「それは……っ!」
動揺して、がたりとゴンドラが揺れた。それでも征十郎は、言葉を続けた。
「ずっと、どうすれば有栖に償うことが出来るのかと悩んでいた。今日、ここに連れてくることで有栖に少しでも罪滅ぼしが出来たとしたなら、いいんだが」
「何言ってるの……罪滅ぼしとか。あれは、別に征十郎のせいじゃない」
「……俺が離れてしまえば、きっと全ては収まることくらい……わかっていたんだ。それでも俺は、有栖と一緒にいたかった。この意味、わかるかい?」
「……わからない」
わかるはずがない、何一つ。だって私は、幼馴染というだけで結局彼のことなど何も知らないのだから。何も、わかっていないのだから。彼がどんな思いで私の元を離れたのかとか、どんな思いで中学で再開して再び目の前にいるのかとか。
どんな想いで、傍にいてくれているのか。
「そうだね、君は……何一つ俺を知らない。俺が赤司征十郎であるということだけしか、何も。それでも君は、もう俺のことをそれだけしか知らないわけじゃないだろう?」
「……征十郎?」
「俺がバスケを好きなことを知っている、俺がバスケ部のメンバーを好きなことを知っている。ああ、でももう一つ……大事なことを知らないままだったね。今、教えるよ」
「征十ろっ……」
重なる唇。彼の手が、私の肩を掴む。ゆっくりと離れて、綺麗な顔が見える。なんて、美しく微笑むのだろうか。征十郎の綺麗な瞳と目が合って、動けない。
もう一度、もう一度と……唇は重なる。自然と目を閉じた。