第3章 おはよう三次元
昼下がりの公園。
ざわざわと木々が音を立てて揺れている。
木陰で風に当たる俺達を揺れる木漏れ日の光が何度も照らし出す。
アイリス「年上の私が言うのも変ですけど…アイトさんってお兄ちゃんみたいで凄く安心します」
俺の目の前で凭れ掛かるアイリスは目を瞑ったまま話した
アイト「兄貴がいるのか」
アイリス「はい。訓練兵団を次席で卒業して調査兵団に行きました」
調査兵団…、それはかなり心配だよな。
アイト「まだ生きてるのか?」
アイリス「えぇ。意外としぶといみたいです」
ふふっと笑うアイリス。
顔を向けないからはっきりとは言えないが無理しているようにも感じる。
アイリス「もうずっと会ってませんがあの兄の事です。そう簡単には死にませんよ。食べられそうになったら私が作った手榴弾口に投げ込むって言ってましたしね」
その兄にしてこの妹ありか。その兄貴ならやり兼ねんな。
肉親がそんな死地に居るというのは気が気じゃないだろう。何時か機会があれば休暇でも取らせて会わせてやりたいな。
まだ二日だが、ふと莉那の顔が目に浮かんだ。
やはり自分の兄妹が危険な場所に居るというのはかなり辛い。
この子…もう年上だけど良いや。この子も自分の事も相当辛いだろうに。
アイト「あー…アイリス?」
アイリス「はい? なんですか?」
振り向くのではなく上を向くアイリス。
これはこれで上目遣いだ。
さっきとは違い、リックの時のように優しめに頭を撫でた。
アイト「きつかったら甘えなよ。溜め込み過ぎないように。隊長命令な」
アイリス「んっ…ありがとうございます」
ニコリと微笑むとそのまま目を閉じた。
アイリス「あのアイトさん…」
アイト「ん?」
撫でていない片方の手を掴まれ、握られるとアイリスは言葉を続けた。
アイリス「死なないで下さいね…」
言われるまでもない。夢の中とはいえ、死ぬのは御免だ。
暫くすると小さな寝息が前から聞こえてきた。
アイト「(俺も眠くなってきた…)」
片手は手を握り、もう片方は綺麗な金色の髪をしたアイリスの髪に乗せ、霞む視界を受け入れ眠りに落ちた。
帰り道に夕飯の食材買って帰るか…。