第1章 明晰夢
「隼人くんー!隼人くんー!! 宿題を教えて欲しいんですが!!」
「たまには自力でどうにかしようって気にはならないのかな?」
「出来なくもないけど一人ぼっちは寂しいもんな…」
「帰れ。魔法少女」
ノックもせず、海外の特殊部隊が室内を制圧するかの如く乗り込んできた我が妹。
正直、ウザイです。
容姿が良くて成績もそこそこ良く、運動神経も良い、良く出来た妹。ある意味自慢の妹だ。
ただ、そう、凄く喧しい。
室内に入ってくるなり俺の部屋の中央にあるローテーブルに宿題を敷き詰め、
「さ、どうぞ」
俺の部屋なのに何故か妹が席を薦めてくる。
こんなの絶対に可笑しいよ。
「……で、今日は何を教えればいいんだよ」
が、日常茶飯事過ぎてもう突っ込む気力も沸かない
「英語についてお願いします!」
黙っていれば凄く可愛いんです。
中学三年生で今年受験生。俺の一個下。
保育園から大学院まで一貫である私立に通う俺等。
レベルは…六大学張りのレベルです。
自慢だが、去年の全国模試余裕の一等賞です。ほら、妬めよ。
そしてこの妹もこんなんだけど結構出来る子なんです。ただアホの子なだけなんです。
「つまり、疑問系になると、こうなるんだよね」
「…そう。---もうワシから教える事は何もない」
「師匠! まだまだ教え切ってもらえってません!」
それに乗る俺もきっとアホの子なのかもしれない。
あぁ…。逃げ出したい。
「ふぅ…ようやく終わった」
「お疲れ様。紅茶淹れて来てやるよ」
妹の宿題が終わり、この長い戦いの中にある一時の休戦を迎えた。
「手伝おうか?」
「いや、休んでていいよ」
部屋から出る直前の俺に気遣って言ってくれたのだろうが、あの子に手伝ってもらうと紅茶が何故か珈琲のような色になるのでご遠慮して頂いた。
これでも紅茶の淹れ方にはかなりの自信がある。
友人の家で教わり覚えた結果、彼女の父親が経営する有名執事喫茶で働かないかと言われた位だから自信はある。
俺って昔からそうなんだ。一度興味が沸くととことんやり込む。気になるととことん調べる。
そのせいですれ違いも多々あったけど…。