第8章 残業手当
リック「ごめんなさい。言い方が悪かった・・・。戻りたいと思わないの?」
アイト「それが何故か寝ても帰れないんだよね・・・。死ぬ程の強い衝撃与えたら戻るかもだけど」
リック「・・・試す?」
キョトンと首を傾げながら腰のナイフホルスターから苦無抜くの止めようか。
アイト「別に良いよ。あ、リックが愛しのアイトさんに会いたいならーーー」
リック「私の特技は肉を裂くことです」
アイト「もう少しこのままでいたいかなー」
夜間の警備というのは結構恐ろしい。
路地の曲がり角は明かりがなく真っ暗で。そこから何時暴漢が出て来てもおかしくない。
ましてや憲兵なら財布事情も良いと考え集団で襲ってくることもあるだろう。
幸いこの日はそんな事なく戻って来れたのだが・・・。
支部に戻ると、当直勤務の憲兵に声を掛けられた。
「お疲れさまですアイトさん。先程支部長から言伝を頼まれました。『捕まえた訓練兵の尋問はこちらで行います』との事です」
随分仕事熱心だこと。それに耳も早いな。
憲兵団の施設に営倉があると耳にしたことがある。もしかしたらその流れで耳に入ったのかもしれない。
アイト「・・・・・・そうか。わかった。」
リック「・・・・・・」
当直の憲兵の横をすり抜け、自分たちの部屋へと向かった。
アイト「さて、明日も早いし風呂入って寝るか」
リック「・・・アイト、少し良い?」
部屋へと続く廊下はコツコツと床の木材を叩く音が響く。その音に負けるくらいの小声でリックが声を掛けた。
アイト「なに?」
リック「少し残業手伝って・・・」
アイト「ありゃ、じゃあ執務室戻るか」
リックはフルフルと首を横に振ると言葉を続けた。
リック「浴場で出来る。だから一緒に来て」