第45章 -合鍵-(宮地清志)
なんか美味しいデザートでも買ってこうかな…
会社から駅までの道は誘惑だらけで、
美味しいカフェやケーキ屋さんが多く、
久しぶりに明るいお店を見て、
すっかりテンションがあがってしまい、
(いつもは仕事で遅くて閉まってる)
お気に入りのお店に入ろうとすると、
スマホがスーツのジャケットの中で震えた。
仕事の呼び出し…?
と、思わず構えてしまうけど、
スマホの画面に現れた名前は、
大好きな宮地さんの名前だった。
でも、その名前とともに表示されている文章に
思わず首をかしげてしまう。
《デートなのかよ?》
わたしは急いで無料通信アプリを開き、
返事を打ち込んだ。
《違いますよ。デートしたい相手はお仕事中ですもん。》
《どうしたんですか?》
仕事…終わったのかな?
仕事中に連絡くれるなんて…。
《早めにあがるから、ウチで待ってろ。》
ウソ…?嬉しい…‼︎
《用事あんならしょーがねぇけど…》
ちょっと胸キュンして返信を忘れていると、
宮地さんから連投でメッセージが
送られてきてしまった。
《待ってます‼︎何かご飯作ってますね♪》
わたしは嬉しくて、
ケーキ屋さんに入るのはやめて、
早々と電車に乗った。
自分の家ではなく、
大好きな宮地さんちに行く電車に…。
宮地さんちはウチよりも会社に近く、
すぐに着いてしまう。
わたしはスーパーで軽く食材を買って、
宮地さんちに向かった。
キーケースに付いてる新しい鍵…
それを見るたびドキドキする。
宮地さんは付き合うようになってすぐに
合鍵をくれた。
けっこうすぐにくれたから、
正直、わたしはビックリした。
しかも、くれたのは、
取引先からの帰りの車の中。
「ん!」
「…?なんですか…コレ?」
「あ⁈見りゃわかんだろ⁈鍵だよっ‼︎」
「それはわかりますけど…」
「…ったく。オレんちの鍵だよ。
平日は特に会社以外じゃ会えねぇし…」
わたしがポーッとして鍵を受け取ると、
宮地さんは一瞬照れたように微笑んで、
でも、すぐにハンドルを握り、
車を出してしまった。
あの時の宮地さん、すごく可愛かったなぁ。
そんなことを思い出しながら、
何度か使った合鍵を今日もまわした。