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〜Mint Candy Story〜

第45章 -合鍵-(宮地清志)


珍しく定時で上がれそうだったわたしは、
チラリと彼…宮地さんのほうを見るけど、
相変わらず彼は上がれそうもない。


「お先に失礼しまーす」


誰に言うわけでもなく、
デスクの皆に声を掛けると、
「お疲れ〜」「珍しい‼︎」「早いじゃん‼︎」
などと声が返ってくる中、


「なんだ、デートか?」


そう声を掛けてきたのは
ちょうどコピー機の所にいた
大好きな先輩…氷室さんだった。


大好き…というのは、もちろん”先輩”としてで、
氷室さんは宮地さんの1つ下の先輩で、
氷室さんとは一緒に仕事をする機会も多くて、
どんな時でも優しく接してくれる氷室さんに
わたしはいつも励まされ、癒されていた。


そう…言うなれば会社のオアシス‼︎


ほんとに氷室さんは
わたしにとってそんな存在だった。


「違いますよ〜(笑)」


「はは…ほんとか?怪しいな。」


「ほんとですよ〜。」


「なんだ、オレの見立て違いか…」


「え…?」


氷室さんの不思議なことばに
思わず氷室さんを見つめてしまうと、
氷室さんは悪戯っ子のような瞳で
わたしを見つめ返し、そっと耳元で囁いた。


「檜原、最近綺麗になったから。
新しい恋でもしてるのかなって
思ってたんだけどな。」


「な…っ⁈」


「はは…その反応は図星か?」


「ち…違いますっ‼︎
別に綺麗になってないし、
今日も帰って家でゆっくりするだけです。」


前の彼氏と別れたコト、
氷室さんには話してたけど…
氷室さん、鋭すぎるよ…。


彼氏ができたコト…
その彼氏が宮地さんであるコトは、
会社では誰にも言っていない。


会社の人に言わないコトは、
わたしと宮地さん、
2人の意見が一致していた。


宮地さんがモテるトコを見るのは
ちょっと胸がチクチクするけど…。


「じゃ、オレにもまだチャンスあるのかな?」


「え…?」


「なんでもないよ。
早く帰って早く寝るように。」


「ふふ…はぁい。じゃあ、お疲れさまです。」


氷室さんのことばが引っかかったけど、
氷室さんはすぐにいつも通りになったし、
わたしはそのまま会社を後にした。



遠くから宮地さんが見ていたなんて、
気付きもせずに…。

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