• テキストサイズ

〜Mint Candy Story〜

第43章 -花園-(赤司征十郎)


「最初に挨拶した時から
なぜかすみれに気を惹かれた。
すみれの表情とは裏腹の感情に
とても興味を持った。
すみれのピアノを弾く姿には
目を奪われたよ。」


優しくわたしを見つめたまま、
彼はことばを続けた。


「けど、すみれは伊集院さんの
婚約者だと紹介された。だから、
ただ魅力的な人に会っただけ…
そう思うことにしたのに…
あの中庭ですみれと出会った。
すみれのコロコロ変わる表情に
惹かれてしまった。」


「そ…それだけで…⁈」


やっとの思いで出たことばは、
たったそれだけだった。


「あぁ。少々強引だと思ったけどね。」


「少々どころか…
ものすごく強引です…」


「ははっ‼︎
やっぱりすみれは面白いな。」


彼はまた面白そうに笑い、
わたしの頭をポンポンとした。


「オレにそんなに正直に話す人は、
すみれが初めてだ。
はっきり言える意志を持っていて、
でも、相手を立てることもできるし、
ピアノを弾く姿や
ひとつひとつの所作にも品がある。」


「わたしの意志は無視…ですか?」


わたしの結婚に
わたしの意志は必要ない…
そう思っているのに、
彼にはどうしても
それを聞きたかった。


「無視したつもりはない。
すみれも…
オレと同じだと思ったけどな?」


「…⁈なん…で⁈」


「ふふ…すみれは感情を
隠すのが上手だけど、上手じゃない。」


「そ…そんな意地悪な言い方、
しないでください!」


そんな謎かけみたいな言い方されても、
まったく意味がわからない。


わたしが何も言えないでいると、
彼は突然わたしを優しく抱き締めた。


「…っ⁈」


「強引だったのは十分承知だ。
その上ですみれの気持ちを
聞かせてほしい。
すみれの気持ち次第では、
婚約を破棄してもかまわ…」


「名前っ‼︎」


「すみれ…?」


「結婚は親の決めた相手だって…
ずっと昔から決まってた。
だから、婚約者の名前なんて
覚えてなかった。
でも…新しい婚約者だって
言われた”赤司征十郎”って
名前だけは、すぐ覚えた!」


わたしは一気に喋ると、
そのまま彼の背中に腕をまわした。


/ 550ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp